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たとえば、これまで戦後補償として論じられてきた問題も脱植民地化という枠組みで理解できる。歴史をさかなでるこれら「他者からの呼びかけ」は、「日本の脱植民地化はいまだに終焉していない」ことを示している。これは、ともすれば糾弾の声として否定的な響きをもつように受け取られるかもしれない。しかし、その声は、むしろ新たな関係を日本とのあいだに構築したいという希望の声ではなかろうか(徐 二〇〇二)。それは時間の連結をとおした未来の再想像へ、われわれを一緒に誘う声である。脱植民地化の時間においては、植民者が自らの過去を忘却することにより被植民者と共有できる未来はなく、植民者としての過去を記憶し続けることから、被植民者とともに人間性を回復しなければならないだろう。

太田好信「解説 批判的人類学の系譜」(『文化の窮状』所収)

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