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「ジャポニスムを考える」を読んでるけど、ジャポニスムというか日本という国めちゃくちゃ厄介だな...
https://www.shibunkaku.co.jp/publishing/list/9784784220342/

「ジャポニスム」というのは19c半ばから20c初頭まで、欧米で発生した日本ブームとその受容(印象派とかアールヌーボーとか)という歴史的に画定できる現象のことを指す、つまり主体は欧米人なんだけど、日本ではクールジャパンみたいなのとつながって「日本が主体的に発信した」みたいな形で表明しがちになってしまっている、という指摘が繰り返しなされている。
典型は、2018年に日仏合同で開催した展覧会が、日本では「ジャポニスムの150年」だったのに対して、フランス側では「Japan - Japonismes. Objets inspirés, 1867 - 2018」となっている。決定的な違いは、フランス側のタイトルはJaponismesと複数形になっていることで、浮世絵からマンガまで連続性があるわけではなく複数のジャポニスムの存在を置いている点。これが日本側のタイトルは単一のジャポニスムが150年続いているという理解で、浮世絵からマンガまで繋がってしまう。

日本では、浮世絵からマンガまで直線的につなげようとする思考/志向が働きがちだなとおもう(自分も含めて)けど、フランスではどういう意味でも印象派とバンドデシネを繋ぐような歴史的理解はないんだろうな。

というか欧米にとって「ジャポニスム」というのは端的に歴史的な現象であって、現代の日本のカルチャーの影響力を「ジャポニスム」だと考えているわけではない。1860年代から20世紀初頭までのジャポニスムの流行は、日本での開国から日露戦争までみたいな感じで、帝国主義国家として台頭してみたら神秘の国ニッポンとかおもってたのがこいつらずいぶん暴力国家じゃねーかみたいな感じで醒めてしまったのが原因らしいが、
日本はその後逆に「ジャポニスム」として受容されたイメージを広告戦略に組み込んでいくことになる。全盛期ほどの流行はなかったけど、それでもけっこう文化輸出としては効果はあったようだし、じっさいブルーノ・タウトが日本に滞在したのも1930年代くらいだけど日本カルチャーを絶賛している。
日本のなかではそういう意味で「ジャポニスム」が継続的な現象なんだけど(このときの文化輸出戦略とクールジャパンとあんまり違いがない気がする)、欧米では確実に一旦途切れている。それがたぶん日仏でイメージが噛み合わないんだろう。
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浮世絵と漫画の歴史的関係ってけっこうめんどくさい問題で、一度大正期に岡本一平が社会主義的観念を通じて浮世絵と漫画を接続しようとしている。ここって戦後のストーリーまんがと歴史的連続性があるんだろうか。こういう言説史研究は誰かやっているはずに違いない。