pleroma.tenjuu.net

松方幸次郎の伝記を読んだついでに、幸次郎本人が書いた論考をいくつか読んだ。彼が論考を書いている時期ははっきりしていて、大正12〜15年、昭和9年で、大正期にはまだ川崎グループの経営をしている(昭和2年に経営がほぼ破綻してすべての会社の役員を辞任する)。昭和9年に彼がやっていたことは石油をソ連から輸入するという事業で、リンクの『石油国策』という論考は、石油の英米依存が危険すぎるから原油を掘るなり自前で開発したほうがいいと主張するもの。英米依存脱却の手の一つとしてソ連からの石油輸入をしていた。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1212052

タイトルからプロパガンダかな?とかおもって読んだんだけど、どっこいよほど先が読める人だなという感じで、これ読みながら、燃料は英米依存なのに対米開戦したのはマジで狂気の沙汰だったんだなと思う。幸次郎は燃料の価格安定こそ産業の基礎であり国家の基礎であるとしたのだけど、彼の主張するとおりにはまったくならず、日本は対米開戦して制海権も制空権も確立していない東南アジアの油田を強奪するという完全に馬鹿げた方向に向った。
replies
1
announces
0
likes
2

ちなみに大正12〜15年の文はだいたい経済政策についての論考だとおもう。おおむね積極財政論を主張していて、わからないこともけっこうあったけど、いま読んでもわりと説得力のある主張だった。

歴史では、植民地主義と経済についてちゃんと教えるべきなんじゃないかなとおもう。経済については、政策を一歩間違えれば大量に人が死ぬというか、経済政策の失敗はやっぱり戦争に至る道なんじゃないのというのはある。近代史のなかで恐慌の破壊力はすごい。

いまアメリカで恐慌がおきたらどうなるのかと考えてみて、どうなるかまじでわからないんだけど、日本もアメリカもロシアも中国も、その来たるべき破局を折り込んで行動しているように見えてしまう。これは自分の妄想であってほしい。