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モダンデザインの展開(ニコラス・ペヴスナー)

自然の表面的外観の模倣と対立する自然の精神、およびさらにずっと広い意味での自然、すなわち人間の独立性と対立する宇宙の力としての自然、これが1890年頃のヨーロッパ絵画における新運動のモットーの一つであった。それは、ゴーガンやゴッホの場合のように、本能と自己抛棄に還ることを意味してもよく、あるいはセザンヌのように幾何学的基本形に還ることでもよい。それはやがて、表現主義になって行くか、あるいはまた立体主義になって行くかも知れない。

20世紀初頭のアヴァンギャルドは、ここでいう「自然」から離れることになるけど(それが表現主義であれ、立体主義であれ)、セザンヌにいわせると「絵画とは自然と並行するもうひとつの調和」だけど、自然から離れてしまって絵画だけで一本立ちしてしまえば、調和の原理を探しようもなく壊れていくもんだとおもう。マティスはそれでも絵画の調和を探そうとしたが、彼の絵からみんな強烈な不調和を嗅ぎとっていた。それはともかく、20世紀のヨーロッパ芸術・文化の特徴は「自然」からの決定的な離脱とみなしても、やっぱりよさそうな気はする。メルロ=ポンティの「眼と精神」もそんな感じだったし。

re: モダンデザインの展開(ニコラス・ペヴスナー)
にしても、このペヴスナーの本は、美術・デザインの動向が手際よくまとまっていて読みやすい。文庫化すればよいのに。
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