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2016年3月臨時増刊のユリイカ「出版の未来」を読んでいる。軽減税率の話題が2本あり、ふーんたしかにそういう時期だったねくらいにおもっていたけど、斎藤貴男『苦悶する出版会 「軽減税率」と「ネイティブアド」』を読んで、そうとうヤバい問題だということをいまさら知った。

軽減税率、企業にとっては当然売上(利益)に直結しているわけだから、税率据置きしろって主張するわけだけど、ご存知のとおり新聞は軽減税率の対象となったが書物や雑誌はならなかった。当時、インターネットでは新聞の特権性が批判されていたように覚えている。

当時与党と折衝にあたった日本書籍出版協会によると、自民党税調からは「軽減税率を訴えるなら財源を考えてこい」と言われていたそうだ。新聞社が財源を提示したのかどうかは知らないが(そんなものありえないが)、新聞社は軽減税率になった。
この事情について筆者が論じている箇所は衝撃だったので引用する。

「一般には権力に批判的な紙面だと信じられている朝日新聞にしたところで、例の解釈改憲の国会審議中にはあれほど騒いでおきながら、安保法制が強行採決された昨年九月以降、この問題を社説で正面から取り上げた回数は一、二度のみ。消費税増税そのものについても政府の方針に沿う論説ばかりを繰り返した。業界関係者の話を総合すると、過去の従軍慰安婦報道を唐突に取り消し、謝罪した2014年の騒動も、政権の顔色を窺った結果だった可能性が小さくないのである。」

政府が、なぜ増税など不人気なうえに経済にとってもネガティブな効果しか生まない政策をわざわざするのか謎だったが、要するに増税というのは企業に対する暴力で、暴力を振るってほしくなければおとなしく言うことを聞けと、あからさまに言ってしまえばそういうことになる。とくに、言論機構にたいして経済的不利益をチラつかせるというのはやはり意図的なものがあると思える。
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ユリイカ2016年3月臨時増刊号 総特集=出版の未来
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