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この「マークアップ率」という概念、コストを分母、販売価格を分子とする値で、コストが低く価格が高いほうがいい(=生産効率が高い)わけだけど、「マネージャーの給与とマークアップ率が相関する」というとき、このマネージャーがどうやってコスト削減を実施しているかというのが問題になる。

労働者の賃金を下げれば費用対価格の比はそりゃ上がるだろうし、ようするに賃金格差を作れば作るほど「マークアップ率」なる指標は上昇するんじゃないのという話で、ここから「マネージャーの給料が高いと生産効率が高くなる!」と結論するの相関と因果のとりちがえだとおもうんだけど。

https://twitter.com/tokoroten/status/1762466226037813513

これ資料読んでみているけど、まじで「マークアップ率(販売価格/コスト比)とマネージャーの給与水準の相関」ってただの手品っぽいな笑
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai24/shiryou1.pdf

https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je23/h03-02.html

マークアップ率の動向を我が内閣府が解説しておられる。

そりゃそうだろうとおもったけど、「マークアップ率の上昇」は一般にコストを下げることで成り立つわけで、人件費が高いから海外にでる(引用箇所では製品差別化も重要な要素だが)。「マネージャーの能力がマークアップ率の上昇の原因」なんてどっからどうみても欺瞞でしかない。市場競争力を高めようとすればコストを削るのが妥当なわけで、どこから削るかって人件費から削ってですね。いまは解雇規制あるから削れるコストにも限界があって、これが邪魔だと考える連中がいるって話じゃないですか。

製造業では輸送機械や一般機械などの加工業種で製品差別化によって高い付加価値を生み出す企業が多いことや、Hosono et al. (2022)が対外直接投資による海外生産の拡大が製造業の親会社のマークアップ率を上昇させることを示しているように、アジアを中心とした生産工程の分業化によってコストの低下が図られていることなどが背景にあるものと考えられる

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製品差別化によってマークアップ率の上昇を果たした企業群のマネージャー寄与度を評価してほしいが、「新しい資本主義」の資料にそれが見えないのも、数字の魔法に見えるところ。

先の内閣府の資料を読めば 、「新しい資本主義」会合の「デジタル化によって失業リスクがある」というのもどうみても嘘で、本当のところは、価格競争によるコスト削減圧力から失業のリスクがある(海外労働力への転化)というものだろう。
まあ、でも「新しい資本主義」がなにをしたいのかまじでよく理解できたが...。

先にもあげた内閣府の資料のほうは(「新しい資本主義」会合のデタラメ資料とは違って)、かなり丁寧に調べられており、おもしろかった。
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je23/h03-02.html

「2 マークアップ率と企業行動」には、マークアップ率の高い企業の特長として、「研究開発や人的資本など、無形試算への投資」をしていること、積極的な輸出などがあると書かれている。

デフレとの関係で述べている箇所はとくに興味深いけど、長期デフレ下の日本では、価格上昇に消費者が敏感で、競合にシェアを奪われることを恐れ価格上昇に踏み切れないことが続いてきた。これが価格支配力が弱いという状態で、この場合コスト切り下げ圧力になり、賃金上昇が停滞してきた理由でもある。
マークアップ率が高い企業が研究投資や輸出などの行動をしているのは、それが価格支配力を高めるからで、市場に競合が少ない状態では価格転化させやすく、その分給料水準も高くなる。
もちろん、マネージャーの給与水準との相関関係があるなどのどうでもいい話は書かれていない。

やっぱり、新しい資本主義は労組の弱体化と雇用規制撤廃が目的なんだろうな。あと「能力に見当った賃金」というイデオロギーを浸透させることで貧富の差を肯定すること。デタラメを述べている理由がそれ以外見当らぬ。